アーカイブ

2005年7月アーカイブ

 ニューヨークは面白い所だと、つくづく思った出来事がいくつかありました。ある日、地下鉄『E』ラインの車両での事。とある駅でドアが閉まる寸前、ひょいと見るからにラテン系の男性が飛び乗って来ました。背中にはギターを背負い、頭にはバンダナを巻いてます。飛び乗った瞬間、背中のギターをくるっと前に抱えたかと思ったら、いきなり歌い出したじゃないですか!。もちろん、地下鉄は走っています。車内のけたたましい音に負けじと、笑顔で歌いながら歩いて行きます。明るいラテン(ラ・バンバだったかな?)の歌声が響き渡る中、周囲の人はチラッと見ただけ。驚くでもなく、さして気に止めるでもない様子。そして次の駅に着いたと思った瞬間、上手い具合に歌を歌い切りました(すごい!、ピッタリ!)。ドアが開くと同時にくるっと背中にギターをおさめて、風のように去って行ったのです。走り出した車内は何事もなかったかのよう。あっけに取られたのは私達だけ?!。これは昨年の出来事でした。

 そして今回も同じ様な出来事に遭遇しました(もちろん別人です)。地下鉄の何ラインかは忘れました。ドアが開いて私達が乗り込んだ時、大きなバッグ(大小二段重ね)を引いて一緒に乗って来た男性。なぜかやっぱり、バンダナを巻いてます。走り出したとたん、おもむろに小さい方のバッグを開け、トランペットを取り出しました。そして大きい方のバッグ(トランク)は何と、カラオケセットではありませんか。と、スィッチを入れ、バンドと共にトランペット演奏を始めたのです。1コーラスはメロ、2コーラス目はソロを吹いてます。器用にも片手でペットを吹き、もう一方の手には CDを掲げています。自分のCDなのでしょう。何だか私、身に積まされそう・・・。と、言ってる間に次の駅に着きました。乗り換えが多い駅らしく、アナウンスが響き渡っています。ちゃ~んと、彼は電車が止まる瞬間に一曲目を終え、アナウンスが終わるのをジッと待ってます。そして走り出すやいなや、次の曲を吹き始めました(もちろん、カラオケ付きです)。やっぱり、乗客は動じていません(私達も慣れました)。日常茶飯事ってこと?!。

 駅の構内や通路でのストリート・ライブは良く見かけますが、地下鉄車内とは恐れ入りました!。どう言う訳か、遭遇する私達もなんだろうね?。かと思うと、ホームレスや物乞い(禁止用語かな?)にも驚かされますけどね。これも地下鉄でした。割と混んでいる車内を、車椅子がこちらに向って来ます。人をかき分けながら、ぶつかりながら車椅子を進めて来ます。何やら声だかにしゃべりながら進んでくる、黒人のおじいさん。良く見ると、手や服が少しすすけているよう。見るからにホームレスっぽいじゃないの?!。さすがに周りは迷惑そうな目でやり過ごしています。なんだ?!、って感じ。当たり前です!。あの狭い車内の通路(それも混んでるっつうの!)を人にぶつかりながら、何事かと思えば物乞いかい?!(周囲の乗客の気持ちを代弁してみました)。そして、とある駅に着きました。私達が下りる駅です。電車が走り去りホームを見ると、あの車椅子のおじいさんもいます。改札を出るには4、5段の階段を昇らなければなりません。・・・あれ?!、いつの間にそのおじいさん、上にいるじゃないの!。階段を昇ったところで、たたんでいた車椅子をひろげてるよ!。しゃんと、立ってるじゃないの!。いや~、ぶったまげた~~~!!!!!。

 大胆不敵っていうか、何でもありっていうか、しぶといっていうか・・・この街で生きて行くという事は、並み大抵ではないという事でしょう。人種のるつぼというくらい、外国人がひしめき合っているこの街。とてつもなく貧富の差があり、なおかつ両方が同居しているマンハッタン。今だ、アメリカン・ドリームだって幻想じゃない。この国の人達は何かで一発当てるか、または職に就くか、とにかく先ずは、糧を得る手段に奔走せざるを得ないのでしょう。強くないと生きて行けない街。だからこそ、パワーを感じるのかも知れませんね。どの国の人も、日本人も、ホントに逞しく生きています。とにもかくにも、エネルギッシュで、魅力的な街ではあります、ハイ。
 昨年、一昨年と、やはりニューヨークに行きましたがいつも10月でした。同じようにマンハッタンとコネチカットで『秋』を楽しんで来ました。風は冷たいけどキリっとして、マンハッタンの街並が大人っぽく感じられ、コネチカットでは週毎に色づく山や、木々の美しさに見とれました。まるで水彩画(?)のような見事な紅葉です。日本のよりは色も濃く、あざやかさがちょっと違う。ハデ(?)だわね、やっぱり。そしてこの辺りは湖も多く、鮮やかな山々が湖面に映って、それはそれは美しい風景でした。

 今回は6月、初夏です。新緑の山々も、いかにも清清しくて気持ちがいい。澄んだ空気は緑の香りいっぱいで、体に染み込んでいくようです。まさに、森林浴です。鳥や虫の鳴き声、木々のざわめき、風の音。時々聞こえる隣の家の子供達の声(まるで歌詞の一部分みたいですね)。ゆっくりとした時間が流れて行くのです。何だか懐かしい気持ちになって、田舎にいた頃の子供時代を思い出します。そんな中でぼんやりと何とも素朴な、平和な一日が過ぎて行くのです。(他の皆は忙しいんですよ、農作業で?)

 この季節は『花』を楽しむ季節でもあります。(と、ここの家主の友人が言ってました。)確かに、週代わりでいろんな花々を愛でる事が出来ました。この家の庭(林?)には友人が植えた花もさることながら、野生の木や花がいろいろ生い茂っているのです。初めて見た、野生の「マウンテン・ローヤル」の可憐な白い花が素敵でした。そろそろ終りに近いと言う、「ライラック」も。うす紫とピンクの小さな可愛い花です。次の週には「かきつばた」が艶やかに咲き誇り、周りには野生の「白い菊」が引き立てています。黄色い、可愛い花も所々群れをなして生えているのですが、名前を忘れました。やっぱり野生だそうです。

 次の週になると今度は「あやめ」が咲き始めています。他にもピンクの野生の花や、椿の木が芽吹いて来ていました。何とも華やかな花の競演です。それを愛でつつも、皆は家の修繕と庭や畑の作業で大忙しなんですよ、実は。3年ぶりの家まわりのペインティングが今夏の目標なんだそうです。いい時に来たね、とケンちゃんは大いに歓迎されました。ケンちゃんも嫌いじゃないので、楽しんでペンキ塗ってましたっけ。昼間は出来るだけ体を動かして、夜はおいしくお酒を飲む。なんて、健康的なの!(・・・?!)。ちなみに友人達はグラフィック・デザインが本業なんです。ま、これらの労働は頭と体の切り換えというか、気分転換にはいいそうで、趣味みたいなもんです。だから率先して、楽しんでやれるんでしょう。私達もこんなに体を動かして、汗をかいたのは久しぶりの事。ホントに、気持ち良かった!。

 そして夜。酒宴も半ばにさしかかった9時頃です。まだ辺りはほのかに薄明るく、虫が鳴いてます。友人の『さあ、ショータイムだよ』のかけ声に、テラスに出てみると『あ、光った!』。あちらこちらでチカッ、チカッと光り出しました。ホタルです。アメリカのホタルです。ひょっとしたら初めて見るかも?。イメージしていたホタルは「ぼんやりとした光」でしたが何と、実際はクリスマスのイルミネーション(星球)みたいです。小さな、しかし強い光を放っています。そこら中、私の周りも。友人の一人が『ほら、じゅんぺい、これがホタルだよ』って、私の手のひらに置きました。小さな虫は一瞬、手の上でごそごそしたかと思ったら、チカッ、チカッ、間髪入れずもう一回、チカッ。そしておもむろに飛んで行きました。手の上で、こんなに間近で、ホタルが3回も光った!。初体験どころか、貴重な体験と言うか、不思議な現象と言うか・・・ただ、ただ感動。ほんの3、40分のショータイム、気がつくと辺りはもう真っ暗になってました。

 マンハッタンに戻って、あまりの騒音に驚きます。ビルもでかいけど、車も多いし、ホントにうるさい。街の喧騒などと、生易しいもんじゃありません。地下鉄など、電車の音がハンパじゃないです。ゴーッと機械の軋む音っていうの?、鉄の固まりが動く音っていうの?。ホームにしばらく立ってると、難聴になるんじゃないかと思うくらい。何もかもダイナミックです!。つづく
 7月に入り、今年ももう折り返しです。ホントに、月日のたつのの早いこと!。先月はスケジュールをやりくりしてニューヨークに行って来ました。ここ数年の恒例の行事です。2~3週間を目標に、マンハッタンとコネチカットの生活をエンジョイするのが目的です。週日はマンハッタンで友人と食事をしたり、歩き回ったり、コンサートに行ったりして過ごし、週末は20年来の友人のセカンドハウスにお邪魔します。このコネチカットの家でいい空気の中、庭仕事や家周りの作業を手伝い、夜はみんな(5人)で酒を酌み交わす。まったく環境の違う場所で過ごすアメリカは、心も体も切り換わって、生きてる実感や充実感を味わえます。マンハッタンの騒音が一変して、コネチカットではし~んという音に包まれる。毎週末、約一時間半(車で)の小旅行は「命の洗濯」の感があります。とにかく空気と水がおいしい!。

 コンサートは3つ行きました。ブライアン・マックナイト、サンタナ、JVCジャズフェスティバルの一つである『Steps Ahead 2005 &"Portrait of Jaco"』。まったくタイプの違う3つのコンサートを堪能したのでした。ただし、B・マックナイトは私は途中で脱落。会場(マディソン・スクゥエア・ガーデン・シアタ-)の冷房のきき過ぎに耐えきれず、前座(?)二つ目で退場。メインは見られずと、情けない次第。(だって、病気になりそうだったもの)こっちはコンサートと言ってもとにかく、長いのです。7時~8時くらいから始まって、11時、12時は当たり前なんですから。必ず前座が一人、二人ありますしね。メインは早くて9時くらいかな・・・?。前にも経験済みなので覚悟はして行きましたけど、あの異常な(?)寒さに負けました。そしてサンタナです。こちらはマディソン・スクゥエア・ガーデンのメインホールで。上着を2枚持参して挑みましたが、この日は快適に楽しめました。さすが!、サンタナ。貫禄とキャリアは言うまでもなく、パフォーマンスと音の良さ、聴きやすさ、音楽のすばらしさに感動。最近のヒット曲もさることながら、アンコールでのブラック・マジック・ウーマンとオエコモバ(でいいのかな?)は涙、でしたね。

 私の周りにはラテン系(?)のお客さんが多いらしく、盛り上がり方は尋常じゃないです。前座が終わった後、9時くらいからスタートして、始まったとたんから通路に来て踊り続けたおじさん(?)がいました。いや、パワフルでした。途中何度も、後ろの私達に一緒に踊ろうとあおる、あおる。良く見たら、周りには数人、後半には沢山の人が踊り、歌ってました。著明なアーティストも随分来ていたようです。サンタナのキャリアから考えたら当たり前ですが、子供連れ(家族ぐるみ)のお客さんが多かったのも以外でした。コンサートによって客層(年代、人種)がまったく違うのも、ニューヨークならではなのでしょうか?。何はともあれすばらしく、楽しいコンサートを体験してきました。ちなみに、この日は11時半くらいには終わりましたので、早い方でしょうね・・・?。

 そして次ぎはジャズです。昔、ニューポートのJVC ジャズ・フェスティバルには行った事がありましたが、ニューヨークではその頃もこうだったのかな?。マンハッタンのいろんな場所(カーネギー・ホール、ジャズ・クラブ、大学、他いくつかのホールなど)で毎日、ライブをやってました。 sold out になってしまったアーティストもいて、惜しかった!。私達は Beacon Theatre での『seven steps to jaco 』を選びました。アップタウンにある、いかにも歴史を感じさせるホール(2000人弱かな?)です。由緒あるホールなのでしょうか、名だたるアーティストがここで演奏しています。一部は『 Steps Ahead (2005) 』(Mike Mainieri 率いる5人グループ)の演奏。レコード・ジャケットに名前を列ねるミュージシャン達の凄まじい演奏は、圧巻そのもの。ホントに頭が下がりますって、感じ。何と、総合司会(?)が Will Lee と言うのもすごいでしょ?。そして二部はあの、Jaco Pastorius を偲んで・・・とでも言うのかしら?、凄腕のベーシスト達が出るは、出るは。職人芸というか、技の数々・・・難しすぎて頭がクラクラして来ましたよ。総勢10人くらいのベーシストにドラムやパーカッション、民族楽器にストリングス(カルテット)、管楽器とみんな無茶苦茶上手い!。世界は広い!!。おそれいりました!!!。つづく